ハブの恩返し

昔は豆腐を作る時に海水で豆腐が固まるようにしていました。

ある時、百姓の女の人が豆腐を作るために海水を汲みに海に

行きました。桶に海水を入れてそれを頭に乗せて持って帰る

途中で「パチパチ」という音が聞こえて来ました。

その音はすぐ近くのアダンの林の中から聞こえて来ました。

「なんだろう。」そう思って音のする所を見ると煙が上がり、

その煙の下では勢い良くアダンの枯れ葉が燃える炎が見えました。

「火事だ!今のうちに消火しないと大変なことになる!」女の人は

海水を入れて重くなった手桶を持って駆け出しました。燃えて

いる火の真中にはとても大きなハブがいました。

そのハブは、もうすっかり火に囲まれて逃げることができないで

いました。

「さあ、助けてやるからね。これから悪いことをしたらダメだよ。」

女の人は頭に乗せていた桶の中の海水をザザッとかけて火を消し

ました。女の人がもう一度海から海水を汲んで帰ってくるときには、

そのハブの姿はもう見えませんでした。ある日、その女の人が

赤ん坊を連れて芋を掘りに畑に行くと赤ん坊が泣いてばかりいました。

傍らに行って抱いてあやしてやると泣き止むのですが、離れて芋を

掘りはじめるとまた泣き出しました。女の人は仕事がはかどらない

ので困ってしまいました。

それで仕方が無いので赤ん坊が泣いていても構わずに芋掘りをする

ことにしました。するといつの間にか赤ん坊が泣かなくなりました。

それどころか、赤ん坊のニコニコした笑い声が聞こえて来ました。

「まあ、どうしたのでしょう。さっきまであんなに泣いていたのに

今度は一人で機嫌よく笑ったりして。」赤ん坊の所に行って見て

みると、女の人はとてもびっくりしました。赤ん坊の傍らには

大きなハブがいたのです。

女の人は慌てて、ハブを追い払う棒を探したがみつかりません。

赤ん坊がまた笑っているので、もう一度見てみると、赤ん坊は

ハブの首のところをギュッとつかんで、ハブの尻尾が目の前で揺れ

る度に笑い声を上げているのでした。そのハブは、この前火事に

なった時に助けたハブで、お礼に赤ん坊のお守をしていたのでした。

女の人が呆れてみていると、ハブが言いました。「この前の御恩

返しに、あなたにハブに噛まれないおまじないを教えてあげま

しょう。もしこれからハブに会ったり、ハブがいそうなところに

行った時は、一息で、潮汲みの子孫だよ。水汲みの子孫だよ。

上の道を通ったら、下の道を通れ、下の道を通ったら上の道を通れ。

ジュホー、ジュホーと三回言って下さい。そう言えば、決して噛

まないでしょう。」

この女の人は、それからどんなにハブが多いところでもハブに

噛まれたことがありませんでした。ハブの首はこの時赤ん坊に

強くつかまれたから細くなっているということです。


 
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